有給が1年に10日以上もらえる労働者については,
その有給を付与された日から1年以内に5日間の有給を取得することが求められています。
しかも,これは,「使用者」の義務とされています。

ただ,「労働者」としては,この有給がとりづらい(申請しづらい)現実もあります。

そこで,使用者には「時季指定権(じきしていけん)」が与えられています。
これは,使用者が労働者に「●月●日に休んでください」という制度です。

一部の使用者のこととは思われますが,
「今まで日曜日が定休日だったのに,この日曜日を出勤日に変えて,
有給をとらせよう」という考え方があるみたいです。
このような考え方は,厚生労働省のパンフレットに出ています。

厚生労働省が,このような考え方を推奨しているわけではありません。
厚生労働省は次のような見解を示しています。
「ご質問のような手法は、実質的に年次有給休暇の取得の促進につながっておらず、望ましくないものです。」

厚生労働省は,このような考え方について,グレー(望ましくない)とは言っていますが,ブラック(だめ)とは言ってません。

ただ,一般的にはもともと「日曜日」を「お休み」としている会社が多いのではないでしょうか?
そうすると,会社は「就業規則」に「日曜日」を「お休み」と書いているはずです。
(法律の要件により,就業規則がない会社もあります。)
また,会社には,時季指定権の行使について,就業規則に定めがあるはずです。

そうすると,「日曜日」を営業日に変えることは,
労働者にとって「不利益な変更」にあたりますので,
原則として,「労働者の同意」が必要となります。

労働者が,この同意をすることは,なかなか考えられません。
結論としては,使用者が一方的に,従来の「お休みの日」を「営業日」に変更することは,
かなり難しいことになります。
そうすると,先ほどの例のような「時季指定権」を使うことはできません。

では,このようなグレー(?)な「時季指定権」ではない場合はどうでしょうか?

労働者に,1年あたり5日の有給を取得させることは使用者の義務ですので,
「できる限り労働者の希望」に沿っているならば,問題はありません。
この「できる限り労働者の希望」に沿っていることは,
厚生労働省のパンフレットに記載されています。

このような「時季指定権」ですが,
次の場合には,指定することはできないとされているので,注意しましょう。
それは,
労働者が,「既に5日以上の有給を請求または取得している」場合です。

使用者は,必要以上に,「時季指定権」を行使することはできません。

これは見落としがちなので,注意しなければなりません。

次のコラムでは,働き方改革における「残業」の取り扱いについて記載する予定です。